できるだけ本を読む時間を作ろうと思い、本屋にいくとまとめて何冊か気になった本を買うようにしています。
結局、数週間「積ん読」状態に陥ることが多いのですが、目に留まる場所に置いておくと『そろそろ読まなきゃな』とリマインドしてくれるので、
そういう意味では電子書籍よりリアルな紙の本のほうがいいのかななんて思ったり。
実用性の高い、体験的仕事論
さて今日読んだのはアートディレクターとして有名な寄藤文平さんの『デザインの仕事』。
JTの「大人たばこ養成講座」やR25などのデザインなど幅広い広告や装丁を手掛けている方です。
随分前になりますが、R25の誌面で寄藤さんのデザイン論的なものを読み共感した記憶があったので、ぶらり立ち寄った蔦屋書店で手に取り購入しました。
著名なデザイナー/クリエイターの出す多くの本は、
既に成功した方が→成功した事例を紹介し→どのように成功したのかそのプロセスを公開する
というものが多いですよね(デザインの本以外でも、そうかもしれませんが)。
読み手側の心理としては『自分もこの人みたいになりたいから』、頑張って情報を吸収しようとするわけですが、
啓発書としてはある程度機能するものの、実用性には乏しい場合が多いんじゃないでしょうか。
その点、本書はそういう本とは性質が違っていて、いい意味で読者を意識していないというか、少なくとも誰かを何かに導くために書いている本ではありません。
書籍と読み手の関係性や距離のとり方が非常にうまくて、ある意味その辺もうまくデザインされていると感じました。
細かな内容やトピックスについては触れませんが、個人的にはあとがきに書かれていた
若い人は、既存のわかりやすいレールに乗らず、不安であることにもっと肯定的になってもいいのではないでしょうか。
という一文が記憶に残りました。
私自身、普段仕事をしていて、「このままこのスタイルで仕事していていいのかな」とか、「自分にとってのデザインってなんなんだろう」とか、「今、これをやっていていいのかな」と常に悩み考えながら、不安の中で生きています。
なので、状況や取り巻く環境は違えど、寄藤さんの体験的仕事論を読み進めていくと、並行して自分の今後や現在の立ち位置なんかも考えることができました。
帯に「デザインの教科書ではなく、考えるための資料に使ってほしいです。」とご自身でコメントされている通り、デザインの仕事について考えるときに使える極めて実用性の高い一冊なので、デザインの仕事をしている方は一読の価値ありです。